AGAクリニック経営の新常識｜オンライン診療でLTVと継続率を改善する方法

薄毛や抜け毛に悩む男性は年々増え続けています。薄毛や抜け毛は年代とともに増加することが、日本皮膚科学会の調査で明らかになっています。ガイドラインによれば、20代男性の約10％、30代で約20％、40代で約30％、50代以降では40％以上がAGAを発症するとされています。

出典：日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」

AGA治療は、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬を中心に、半年から数年にわたる継続的な通院と治療が不可欠です。しかし、多忙なビジネスパーソンや遠方在住の患者にとって、定期的な来院は時間的・心理的な負担となり、治療を断念する要因になっていました。

このような背景から、患者の利便性を大きく改善するオンライン診療が、AGAクリニックの収益性を高める新しい鍵として注目されています。特に「継続」が成果につながるAGA治療とは極めて高い親和性を持っています。本記事では、オンライン診療の導入がAGAクリニックの経営にどのような効果をもたらすのかを、LTV（顧客生涯価値）と継続率のデータから解説します。

AGA市場の特徴

AGA治療は単発の施術で終わるものではなく、6ヶ月以上、しばしば数年単位での継続投薬が前提となります。

この長期継続型モデルは、クリニック経営において「毎月の定額収益」を積み上げるストック型の特徴を持ちます。一般的な治療は月3,000〜8,000円程度で始められ、患者一人あたりの売上が安定して積み上がります。 さらに臨床研究では、5年間フィナステリドを1mg/日服用した男性の99％以上で改善または進行の停止が認められた※¹との報告もあり、「続けるほど成果が出やすい治療」であることが示されています。

つまり、AGAクリニックの収益性は「いかに患者に継続してもらえるか」にかかっているのです。

¹出典：Yoshitake T, Takeda A, Ohki K, Inoue Y, Yamawaki T, Otsuka S, Akimoto M, Nemoto M, Shimakura Y, Sato A. Five-year efficacy of finasteride in 801 Japanese men with androgenetic alopecia. J Dermatol. 2015 Jul;42(7):735-8. doi: 10.1111/1346-8138.12890. Epub 2015 Apr 22. PMID: 25903108.

オフライン診療中心の場合の課題

オンライン診療が普及する以前、AGAクリニックは主にオフラインでの対面診療に依存していました。しかし、この方式には、収益性を阻害する複数の課題が潜んでいます。

離脱と継続率の低下

AGA治療は効果が出るまでに時間がかかるため、患者様が途中で治療を中断してしまうケースが少なくありません。特に、オフライン診療では、以下の物理的・心理的ハードルが離脱の大きな要因となります。

• 物理的ハードル: 仕事の合間や週末にクリニックへ足を運ぶ手間。予約や待ち時間も含めると、1回の通院に数時間かかることも珍しくなく、多忙な方にとっては大きな負担です。
• 心理的ハードル: 「定期的に通わなければならない」というプレッシャー。特に、人目が気になるという理由から、継続的な通院に抵抗を感じる患者様も少なくありません。

これらのハードルが原因で、治療開始後効果が見られる前に離脱してしまうケースも多く、LTV（顧客生涯価値）が想定よりも大幅に減少してしまいます。

新規患者への過度な依存と利益率の悪化

継続率が低い場合、クリニックは安定した収益を維持するために、常に新しい患者様を獲得し続けなければなりません。しかし、AGA治療の市場は競争が激化しており、新規患者獲得のための広告費用は年々高騰しています。

• 広告単価の高騰: リスティング広告やSNS広告、インフルエンサーマーケティングなど、あらゆるチャネルで競合が増加し、新規患者様1人あたりの獲得コスト（CPA）が上昇しています。
• 利益率の圧迫: 広告費が高騰する一方で、既存患者様の離脱が続くと、広告投資の効果を十分に回収できず、クリニック全体の利益率が低下してしまいます。

診療圏の限定

オフライン診療の場合、クリニックの立地条件が患者様を獲得できる範囲を限定します。遠方に住んでいる患者様は通院が困難なため、潜在的な顧客層を取りこぼしてしまっていました。

オンライン診療導入の効果

これらの課題を根本的に解決するのがオンライン診療です。オンライン診療を導入することで、クリニックの経営は劇的に改善され、患者様の満足度も向上します。

継続率の劇的な向上

オンライン診療の最大のメリットは、継続率の向上です。自宅やオフィスからでもスマートフォンやPCを通じて医師の診察を受け、処方薬を自宅に配送できるため、患者様の通院ハードルがゼロに近くなります。 オフライン診療では、多忙なビジネスパーソンや遠方の患者様が3ヶ月で離脱していたとすると、オンライン診療ではそのハードルがなくなるため、継続率が10ポイント近く向上するケースも考えられます。例えば再診率が40％から50％に向上すると、クリニックの収益は大きく改善します。

LTVの改善による収益性の向上

継続率の向上は、そのまま患者様一人あたりのLTVの改善に直結します。 例えば、月額治療費を5,000円と仮定します。

• オフライン診療（平均継続期間4ヶ月）：
  • LTV = 5,000円 × 4ヶ月 = 20,000円
• オンライン診療導入後（平均継続期間12ヶ月）：
  • LTV = 5,000円 × 12ヶ月 = 60,000円

単純計算でも3倍の収益性となり、広告費などの獲得コストを回収し、大幅な利益向上に繋がります。

広告費の削減と既存患者の囲い込み

継続が強化されれば、新規獲得依存度を下げられ、広告費を抑制可能。浮いた予算をサービス強化に再投資できます。これは、広告コストの高騰に悩むクリニックにとって、非常に重要な経営戦略となります。

地域制約の解消

オフライン診療では、クリニックの立地条件が患者様獲得の範囲を限定していました。しかし、オンライン診療は全国どこからでも診療を受けられるため、クリニックの診療圏を日本全体に広げることができます。地方の患者様、海外在住の日本人患者様など、これまでアプローチできなかった潜在的な顧客層へのアプローチが可能となります。

導入時のチェックリスト

オンライン診療の導入は多くのメリットをもたらしますが、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

厚労省「オンライン診療指針」への準拠

医療機関がオンライン診療を行うにあたり、最も重要なのは厚生労働省が定めるガイドラインを遵守することです。特に、初診時の本人確認方法、診療内容の記録、処方箋の発行手続き、情報セキュリティ対策など、厳格なルールが定められています。これらのルールを遵守し、安全かつ適正な診療体制を構築することが、患者様の信頼を得る上でも不可欠です。

参考：厚生労働省　オンライン診療について

電子カルテ・LINE連携の有無

オンライン診療を効率的に運用するためには、既存の電子カルテシステムとの連携がスムーズに行えるかが鍵となります。また、患者様とのコミュニケーションツールとして広く普及しているLINEと連携できるシステムは、導入後の効果を大きく左右します。例えば予約、問診、ビデオ通話、そして支払いをLINE上で完結できる機能は、患者様にとっての利便性を飛躍的に高めます。

継続フォロー（服薬リマインドなど）機能

オンライン診療は「患者様との繋がりが薄くなる」という懸念を持つ方もいますが、適切なシステムを導入すれば、オフライン診療以上にきめ細やかなフォローが可能です。服薬時間を知らせるリマインド機能や、定期的な医師からのメッセージ、チャットでの質疑応答機能など、継続的なフォローアップを自動化・効率化する機能を備えたシステムは、継続率をさらに引き上げる重要な要素となります。

まとめ

AGA治療は、その特性上、オンライン診療と最も相性が良い医療分野の一つです。オンライン診療の導入は、単なる診療手段の多様化にとどまらず、患者様の継続率向上、それに伴うLTVの改善という、クリニック経営の根幹を直接的に強化する効果をもたらします。

新規患者獲得のための広告費が高騰し続ける現代において、既存患者様を大切にし、長期的な関係を築くことは、収益性の安定と向上に不可欠な戦略です。オンライン診療は、この目標を達成するための強力なツールとなります。

AGAクリニックの経営改善を真剣に検討されている方は、ぜひオンライン診療の導入を視野に入れてください。自院の特性や患者層に最適なオンライン診療システムを導入することで、持続可能な成長と収益性の確保が可能となります。AGA治療の未来は、オンライン診療が切り拓いていくと言っても過言ではありません。

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