自由診療クリニック向け|オンライン診療の損益分岐点計算ガイド〜収益化へのロードマップ〜

自由診療クリニックにとって、オンライン診療は新たな収益の柱となりうる大きな可能性を秘めています。地方や遠方の患者さんへのアプローチ、来院時間の確保が難しい層の取り込み、そして新たな診療メニューの開発など、そのメリットは多岐にわたります。しかし、多くのクリニック経営者が抱える共通の悩みがあります。
「なんとなく良さそうだけど、本当に利益が出るのか?」 「導入費用やランニングコストはどれくらいかかるのか?」 「どれくらいの患者さんが来れば元が取れるのか?」
これらの漠然とした不安を解消せずにオンライン診療を始めると、予想外のコスト負担や集客の失敗で、事業が停滞してしまうリスクがあります。
そこで重要になるのが、損益分岐点の計算です。本記事では、自由診療クリニックがオンライン診療を収益化するための羅針盤として、具体的な計算方法から、その数値を事業改善に活かす方法まで、徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたのクリニックのオンライン診療が「なんとなく」ではなく、「戦略的」な事業へと変わるための明確なロードマップが見えているはずです。
損益分岐点(BEP)の基礎知識を理解する

損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる地点のことです。つまり、このラインを超えれば利益が生まれ、下回れば損失が出るという、事業の健全性を測る上で最も重要な指標の一つです。
損益分岐点を計算するためには、以下の3つの要素を正確に把握する必要があります。
- 固定費: 売上や診療件数に関わらず、毎月一定して発生する費用です。
- 変動費: 診療件数や売上の増加に比例して増える費用です。
- 貢献利益: 売上高から変動費を差し引いた、固定費の回収に貢献する利益のことです。
この3つの要素を理解し、オンライン診療事業に当てはめることが、成功への第一歩となります。特に自由診療では、扱うサービスや価格、そして仕入れ原価が多岐にわたるため、個別に正確な数値を洗い出すことが不可欠です。
オンライン診療における「固定費」と「変動費」を洗い出す

それでは、あなたのクリニックのオンライン診療事業における具体的なコストを洗い出していきましょう。
固定費:毎月必ずかかるコスト
- 人件費: オンライン診療に専従、または関わる医師、看護師、事務スタッフの給与です。例えば、週に1日オンライン診療に時間を割く医師がいる場合、その時間分の人件費を按分して計上します。
- システム利用料: オンライン診療システム、電子カルテ、予約システムなどの月額利用料です。多くのシステムが、患者数や機能に応じて料金プランが変動するため、自院の運用規模に合ったプランを正確に把握しましょう。
- 広告宣伝費: オンライン診療の集客のために継続してかける費用です。リスティング広告、SNS広告、記事広告、そして自社サイトのSEO対策費用などが含まれます。
- その他固定費: サーバー維持費、決済システムの初期費用、コンサルティング費用など、診療件数に直接関係なく発生する費用をすべて洗い出します。
変動費:診療件数が増えるごとに増えるコスト
- 決済手数料: 患者さんがオンラインで支払いをする際に発生するクレジットカードや各種オンライン決済の手数料です。
- 医薬品・物品費: 美容点滴やダイエット薬など、処方・配送する医薬品や物品の原価です。自由診療の場合、この原価率が貢献利益に大きく影響します。
- 通信・配送費: 医薬品や美容品などを郵送する際の送料、梱包材の費用です。患者負担とする場合もありますが、事業コストとして考慮する必要があります。
- その他変動費: 診療予約のリマインドメールにかかる費用(従量課金制の場合)など、1件の診療ごとに発生する微細な費用も漏れなく計上します。
具体的な計算ステップ:オンライン診療の損益分岐点を求める

これらの費用を正確に把握したら、いよいよ損益分岐点の計算に入ります。ここでは、具体的な数値例を用いて、3つのステップで計算方法を解説します。
【シミュレーション例】 美容皮膚科のオンライン診療で、マンジャロを処方するサービスを導入すると仮定します。
ステップ1:オンライン診療1件あたりの「貢献利益」を算出する
まず、1件の診療でどれだけ利益が残るかを計算します。ここでは、初診と再診の診療時間の違いを考慮して「平均診療コスト」を算出します。
- オンライン診療単価:30,000円
変動費(1件あたり平均):
- 決済手数料(売上の4%):1,200円
- 医薬品・物品費(薬代原価30%):9,000円
- 梱包・郵送費:500円
- 医師人件費(時給12,000円を換算、変動費として計算)
- 初診:30分 → 6,000円
- 再診:15分 → 3,000円
- 仮に「初診1割・再診9割」の患者構成とすると:
平均人件費 = (6,000円 × 0.1) + (3,000円 × 0.9) = 3,300円
変動費合計:14,000円
👉 貢献利益 = 30,000円 − 14,000円 = 16,000円
※ 初診割合を1割としたため、人件費が抑えられています。実際の患者構成によって変動します。
ステップ2:損益分岐点件数を算出する
次に、この貢献利益を使って、固定費を回収するために必要な件数を計算します。
固定費:
- システム利用料(月額):80,000円
- 広告宣伝費(月額):100,000円
固定費合計:180,000円
👉 損益分岐点件数 = 固定費 ÷ 貢献利益
= 180,000円 ÷ 16,000円 ≒ 11.25件
つまり、月12件以上の処方で黒字化となります。
ステップ3:損益分岐点売上高を算出する
最後に、損益分岐点件数から必要な売上を確認します。
損益分岐点売上高 = 損益分岐点件数 × オンライン診療単価
= 12件 × 30,000円 = 360,000円
今回のモデルでは月12件、36万円の売り上げを超えれば収益は黒字になります。
シナリオ別シミュレーション(初診1割・再診9割の場合)
シナリオ | 月間件数 | 売上高 | 営業利益(税引前) |
---|---|---|---|
ケース① | 30件(週7〜8件) | 900,000円 | 約300,000円 |
ケース② | 50件(週12〜13件) | 1,500,000円 | 約620,000円 |
ケース③ | 100件(週25件) | 3,000,000円 | 約1,420,000円 |
損益分岐点計算結果を事業改善に活かす方法

損益分岐点を計算するだけで終わっては意味がありません。この数値を経営の意思決定に活かすことで、オンライン診療事業をさらに成長させることができます。
損益分岐点件数を達成するための目標設定
損益分岐点件数(今回の例では12件)は、「最低限クリアすべき売上目標」です。この数字をスタッフと共有することで、全員が同じ目標に向かって動くことができます。例えば、「月間12件達成」を目標に、以下の具体的な施策を検討します。
- 集客目標の明確化: 月に12件の新規患者さんを獲得するために、週に何件、1日に何件の予約が必要か。逆算して広告予算やSNS投稿頻度を調整する。
- 業務フローの改善: 1件あたりの診療時間を短縮したり、予約管理を自動化したりすることで、人件費や固定費をさらに削減できないか検討する。
貢献利益を上げるための施策
もし損益分岐点件数が多すぎて非現実的だと感じたら、貢献利益を増やすことを考えましょう。
- アップセル:オンライン診療と親和性の高い追加サービスを組み合わせることで、1件あたりの貢献利益を増やし、損益分岐点件数を下げることができます。例えば、30,000円の処方に親和性の高いメニューを加えて35,000円とすることで、貢献利益は16,000円から19,300円に増加し、損益分岐点件数は約12件から約9件にまで下がります。(増加分5000円に対して原価率30%、決済手数料4%を経費に想定)
- 変動費の削減: 医薬品の仕入れ先を見直したり、よりコスト効率の高い配送方法を採用したりすることで、1件あたりの変動費を抑えることができます。こうした改善は積み重なることで大きな利益改善につながります。
固定費削減の検討
損益分岐点件数を下げる最も直接的な方法は、固定費を削減することです。
- 広告費の見直し: CVR(顧客転換率)が低い広告は停止し、成果の高い媒体に予算を集中させることで、広告費の無駄を削減できます。効率的な配分を行うだけで固定費を大きく抑えることができ、同じ予算でもより多くの新患獲得につなげられます。
- 業務の見直し: 煩雑になりがちな業務をオンライン診療と一体化して管理することで、人件費を抑えた運用が可能になります。近年のオンライン診療ツールには、自動配信や決済機能を備えたものもあり、診療だけでなく予約・決済・フォローアップまでを一元管理できます。これにより、クリニック全体の業務効率化を実現し、スタッフの負担を軽減することができます。
成功事例から学ぶ:損益分岐点を早期に達成したクリニックの共通点

実際にオンライン診療を成功させているクリニックには、いくつかの共通点が見られます。
- 1. 明確なターゲット層と専門性の訴求: 多くのサービスを広く浅く提供するのではなく、「ニキビ治療」「AGA治療」「美容点滴」など、オンライン診療で特に需要の高い分野に特化しています。ターゲットを絞り込むことで、広告費の費用対効果が格段に上がります。
- 2. オンラインに特化した集客施策: 院内にポスターを貼るだけでなく、SEO対策、SNSマーケティング、インフルエンサーとのコラボなど、オンラインでの集客チャネルを複数構築しています。
- 3. 継続的な顧客フォロー: 損益分岐点を超えた後も、メルマガやLINE公式アカウントなどを活用し、患者さんとの関係を継続的に構築。リピーターを増やすことで、新規集客コストを抑え、安定した収益を確保しています。
まとめ:オンライン診療の成長を加速させるための第一歩
自由診療クリニックにおけるオンライン診療は、単なる「便利なツール」ではありません。それは、新たな収益を生み出し、経営を安定させるための「事業」です。
本記事で解説した損益分岐点の計算は、その事業を成功させるための羅針盤です。あなたのクリニックの固定費、変動費、そして提供サービスの単価を正確に把握し、具体的な損益分岐点件数を算出してみてください。
その数字が、あなたのクリニックの未来を大きく左右するかもしれません。まずは、この計算を第一歩として、オンライン診療事業の成功に向けた戦略的な一歩を踏み出してみませんか?
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