厚労省調査が明らかにするオンライン診療の課題と自由診療クリニックの成長チャンス

厚生労働省によれば、オンライン診療を受けたことのある患者は全体のわずか 3.6％。制度としては整備されているものの、利用経験はまだ少なく、これから本格的に広がっていく段階にあります。

これは裏を返せば、オンライン診療は 「成長余地を大きく残した新しい市場」 だということです。今導入に踏み切れば、先行者として大きな優位性を確保できるチャンスがあります。

患者の声には「検査や処置が受けられない」という意見もある一方で、「通院の手間が省ける」「待ち時間が減る」といった 利便性の高さは非常に高く評価 されています。こうした期待に応える工夫を加えれば、利用は一気に拡大していくでしょう。

特に 美容医療やAGA、医療ダイエット といった自由診療の領域は、患者が利便性を強く求めやすく、オンライン診療との相性が抜群です。本記事では厚労省の調査データをもとに、オンライン診療の現状を整理し、自由診療クリニックがさらなる成長を掴むための戦略を解説します。

オンライン診療の利用実態：公的データが示す「今」の市場

厚労省調査によれば、オンライン診療を受診した経験がある患者は 3.6％ に過ぎません。まだ少数派であり、ほとんどの患者は対面診療を選んでいます。ただし、これはコロナ以前の「ほぼゼロ」から着実に成長した数値であり、制度として定着した今後はさらに拡大する可能性があります。

また、利用経験者の内訳を見ると、自由診療として受けた割合は15〜21％ に達しています。美容、AGA、医療ダイエットなど、価格自由度の高い領域でも既に一定のニーズが存在することがわかります。

さらに、受診者の 19％は居住地と異なる県の医療機関を利用 していました。これは「オンライン診療が商圏の壁を壊す」ことを意味します。従来の来院型クリニックでは半径数キロが商圏の限界でしたが、オンライン導入により「全国が商圏」となり得るのです。

→ 経営的に見ると「市場はまだ未成熟だが、自由診療領域では先行者が着実に成果を出しつつある」と言えます。

患者がオンライン診療を選ぶ理由：「利便性」が最大の動機

調査によれば、患者がオンライン診療を選んだ理由は次の通りです（複数回答）。

• 通院時間がない：35.3％
• 体調が悪く外出できない：24.7％
• 待ち時間が少ない：24.2％

ここから見えるのは、患者がオンライン診療に求めているのは 「利便性」 であることです。特に「時間の制約から解放される」ことが最大の魅力となっています。

自由診療クリニックのターゲット層を考えると、このニーズは極めて重要です。多忙なビジネスパーソンや、育児・介護で時間が限られる層にとって、「通院不要」「待ち時間削減」は大きな価値です。オンライン診療を導入することで、こうした層の潜在需要を掘り起こし、競合クリニックとの差別化につなげられます。

患者が感じたメリットとデメリット：オンライン診療の二面性

オンライン診療は利便性が評価される一方で、医療の質への不安が残ることが明らかになりました。

メリット（患者調査）

• 感染症リスクを気にせず受診できる：77.9％
• 待ち時間が減った：75.6％
• 都合に合わせて受診できる：68.6％

デメリット（患者調査）

• コミュニケーション不足を感じた：20.9％
• 検査や処置が受けられない：45.3％
• 十分な診療を受けられない：29.1％

自由診療における意味

美容医療やAGAなどの自由診療は、医師との信頼関係や丁寧なカウンセリングが特に重視される分野です。そのため、初回は対面で安心感を与え、再診以降をオンラインで効率化する、あるいは完全オンラインでも相談やアフターフォローを丁寧に行うといった工夫が、導入成功のカギとなります。

オンライン診療をまだ受けたことのない患者の理由と可能性

厚労省の調査によれば、オンライン診療を未経験の患者が利用に踏み切れていない主な理由は次の通りです。

• 検査や処置がすぐできないから：83.2％
• 対面の方が十分な診察を受けられると考えているから：55.0％

これは「利便性が足りない」というよりも、未知の診療スタイルに対する心理的な不安が大きいことを意味しています。裏を返せば、正しい情報提供や体験機会を通じて信頼を築けば、多くの潜在患者層を取り込める余地があるということです。

未経験者層への前向きなアプローチ

自由診療クリニックがこうした患者を取り込むには、不安を安心に変える工夫が鍵となります。

• HPや資料で「診療の流れ」や「サポート体制」をわかりやすく提示
• 初回オンライン相談を低価格または無料で提供し、気軽に試してもらう
• 成功事例を紹介し、利用後のイメージを持たせる

これらの取り組みは、未経験者の不安を取り除くだけでなく、「オンライン診療は思ったより便利で安心」という体験を広め、結果として市場全体の成長を後押しします。

患者が希望する診療スタイル：ハイブリッドと完全オンラインの共存

患者が望む診療スタイルは以下の通りです。

• 症状に応じて使い分けたい：43.0％
• 医師の判断に任せたい：34.5％
• できるだけオンラインが良い：2.6％

多くの患者は「完全に対面」「完全にオンライン」のどちらかではなく、状況に応じて選べる柔軟性を重視しています。医師の判断を尊重する層も多く、オンライン診療は「対面診療を補完する手段」として浸透しやすいことが分かります。

一方で、割合としては少数派ながら「できるだけオンラインで完結したい」という層も確実に存在します。特に AGA治療、美容外用薬、医療ダイエット のように継続処方が中心の分野では、完全オンライン診療がフィットしやすい傾向があります。

まとめ

厚労省の調査から、オンライン診療は普及初期にありながら大きな成長余地を持つことがわかります。利用経験は3.6％と少ない一方、自由診療では15〜21％に達し、確かな存在感を示しています。

患者は「通院不要」「待ち時間削減」といった利便性を支持しており、質への不安も工夫次第で解消可能です。初回対面や丁寧なフォローを組み合わせれば、新規獲得と継続利用の両立が期待できます。

自由診療クリニックにとって、いまは導入初期ならではの差別化の好機。商圏拡大やLTV向上を実現し、ハイブリッド・完全オンライン双方で成長を掴むチャンスです。

出典

厚生労働省『オンライン診療の適切な実施に関する指針』

厚生労働省『令和6年度 入院・外来医療等実態調査（外来調査：患者票）』

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