自費診療クリニックのオンライン診療「収益モデル」完全解説|損益分岐点とシステム選定で利益が決まる理由
自由診療クリニックにとって、オンライン診療は「導入すれば売上が伸びるもの」ではありません。実際には、収益モデルとシステム設計次第で、黒字にも赤字にもなります。
「どれくらいの患者数で利益が出るのか」「コストを差し引いてどれだけ残るのか」――この部分を把握しないまま始めると、思ったほど伸びない、あるいはコストだけが膨らむという状況に陥りがちです。
本記事では、オンライン診療の収益構造を整理したうえで、損益分岐点の考え方と、利益を左右するポイントを具体的に解説します。収益化できるかどうかを判断するための基準が明確になります。
オンライン診療の収益モデルはどう決まるのか
オンライン診療の収益は、単純に「患者数が増えれば伸びる」ものではありません。実際には、単価・診療件数・継続率、そしてコストの組み合わせによって決まります。収益は、次のような構造で成り立っています。
収益 = 単価 × 診療件数 × 継続率 − コスト
この中でも特に重要なのが継続率です。オンライン診療は、初診だけで完結するケースは少なく、再診や定期利用によって収益が積み上がる構造になっています。
逆に、継続設計がない場合は、毎回新規患者の獲得コストが発生し、利益が残りにくくなります。つまり、オンライン診療は「どれだけ集客できるか」ではなく、「いかに継続される設計になっているか」で収益性が大きく変わるビジネスです。
利益が決まる3つの設計ポイント

オンライン診療の収益は、単純な売上ではなく「設計」によって決まります。同じ単価・同じ患者数でも、設計が異なるだけで最終的な利益は大きく変わります。ここでは、収益を左右する3つのポイントを整理します。
単価(メニュー設計)
自費診療では価格を柔軟に設定できますが、重要なのは売上ではなく利益が残る設計になっているかです。医薬品の原価や決済手数料を考慮せずに単価を設定すると、件数が増えても利益は伸びません。
- 原価率(薬剤・仕入れ):ここを見誤ると、売上があっても利益が残らない
- 決済手数料:数%でも積み上がると利益に大きく影響する
- メニュー構成(単品 or セット):セット設計の方が利益を確保しやすい
単価は「高いかどうか」ではなく、「利益が残る構造か」で判断する必要があります。
継続率(再診・LTV)
オンライン診療は初診だけで完結するケースが少なく、再診や定期利用によって収益が積み上がる構造です。継続設計がない場合は、その都度新規患者の獲得コストが発生し、安定した利益は出にくくなります。
- 再診導線:設計がないと単発で終わる
- 定期処方:継続収益のベースになる
- LINE / CRM:接点がないと離脱する
継続率はLTVを決める要素であり、オンライン診療の収益性を最も大きく左右します。
コスト構造
人件費やシステム利用料、広告費といった固定費に加え、決済手数料や薬剤原価などの変動費によって利益は決まります。特にオンライン診療では、運用の仕組み次第でコストが大きく変動するため、設計段階での最適化が重要になります。
- 固定費:毎月必ず発生するコスト
- 変動費:件数に応じて増えるコスト
- 自動化:人件費削減の余地
同じ売上でも、コスト設計次第で利益は大きく変わります。
これら3つはそれぞれ独立しているように見えて、実際にはすべてが連動しています。だからこそ、単価や集客だけでなく、全体を一つの設計として捉えることが重要です。
オンライン診療のコスト構造(固定費・変動費と費用内訳)

それでは、あなたのクリニックのオンライン診療事業における具体的なコストを洗い出していきましょう。
固定費:毎月必ずかかるコスト
- 人件費: オンライン診療に専従、または関わる医師、看護師、事務スタッフの給与です。例えば、週に1日オンライン診療に時間を割く医師がいる場合、その時間分の人件費を按分して計上します。
- システム利用料: オンライン診療システム、電子カルテ、予約システムなどの月額利用料です。多くのシステムが、患者数や機能に応じて料金プランが変動するため、自院の運用規模に合ったプランを正確に把握しましょう。
- 広告宣伝費: オンライン診療の集客のために継続してかける費用です。リスティング広告、SNS広告、記事広告、そして自社サイトのSEO対策費用などが含まれます。
- その他固定費: サーバー維持費、決済システムの初期費用、コンサルティング費用など、診療件数に直接関係なく発生する費用をすべて洗い出します。
変動費:診療件数が増えるごとに増えるコスト
- 決済手数料: 患者さんがオンラインで支払いをする際に発生するクレジットカードや各種オンライン決済の手数料です。
- 医薬品・物品費: 美容点滴やダイエット薬など、処方・配送する医薬品や物品の原価です。自由診療の場合、この原価率が貢献利益に大きく影響します。
- 通信・配送費: 医薬品や美容品などを郵送する際の送料、梱包材の費用です。患者負担とする場合もありますが、事業コストとして考慮する必要があります。
- その他変動費: 診療予約のリマインドメールにかかる費用(従量課金制の場合)など、1件の診療ごとに発生する微細な費用も漏れなく計上します。
損益分岐点の基礎知識を理解する
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる地点のことです。つまり、このラインを超えれば利益が生まれ、下回れば損失が出るという、事業の健全性を測る上で最も重要な指標の一つです。
損益分岐点を計算するためには、以下の3つの要素を正確に把握する必要があります。
- 固定費: 売上や診療件数に関わらず、毎月一定して発生する費用です。
- 変動費: 診療件数や売上の増加に比例して増える費用です。
- 貢献利益: 売上高から変動費を差し引いた、固定費の回収に貢献する利益のことです。
この3つの要素を理解し、オンライン診療事業に当てはめることが、成功への第一歩となります。特に自由診療では、扱うサービスや価格、そして仕入れ原価が多岐にわたるため、個別に正確な数値を洗い出すことが不可欠です。
オンライン診療の損益分岐点(シミュレーション)

これらの費用を正確に把握したら、いよいよ損益分岐点の計算に入ります。ここでは、具体的な数値例を用いて、3つのステップで計算方法を解説します。
【シミュレーション例】 美容皮膚科のオンライン診療で、マンジャロを処方するサービスを導入すると仮定します。
ステップ1:オンライン診療1件あたりの「貢献利益」を算出する
まず、1件の診療でどれだけ利益が残るかを計算します。ここでは、初診と再診の診療時間の違いを考慮して「平均診療コスト」を算出します。仮に「初診1割・再診9割」の患者構成とします。
オンライン診療単価:30,000円
変動費(1件あたり平均):
- 決済手数料(売上の4%):1,200円
- 医薬品・物品費(薬代原価30%):9,000円
- 梱包・郵送費:500円
- 医師人件費(時給12,000円を換算、初診30分 → 6,000円 / 再診15分 → 3,000円):
平均人件費 = (6,000円 × 0.1) + (3,000円 × 0.9) = 3,300円
変動費合計:14,000円
└貢献利益 = 30,000円 − 14,000円 = 16,000円
※ 初診割合を1割としたため、人件費が抑えられています。実際の患者構成によって変動します。
ステップ2:損益分岐点件数を算出する
次に、この貢献利益を使って、固定費を回収するために必要な件数を計算します。
固定費:
- システム利用料(月額):80,000円
- 広告宣伝費(月額):100,000円
固定費合計:180,000円
└損益分岐点件数 = 固定費 ÷ 貢献利益 = 180,000円 ÷ 16,000円 ≒ 11.25件
つまり、月12件以上の処方で黒字化となります。
ステップ3:損益分岐点売上高を算出する
最後に、損益分岐点件数から必要な売上を確認します。
損益分岐点売上高 = 損益分岐点件数 × オンライン診療単価 = 12件 × 30,000円 = 360,000円
今回のモデルでは月12件、36万円の売り上げを超えれば収益は黒字になります。
シナリオ別シミュレーション(初診1割・再診9割の場合)
| シナリオ | 月間件数 | 売上高 | 営業利益(税引前) |
|---|---|---|---|
| ケース① | 30件(週7〜8件) | 900,000円 | 約300,000円 |
| ケース② | 50件(週12〜13件) | 1,500,000円 | 約620,000円 |
| ケース③ | 100件(週25件) | 3,000,000円 | 約1,420,000円 |
オンライン診療の収益を伸ばす方法(改善ポイント)

損益分岐点を計算するだけで終わっては意味がありません。この数値を経営の意思決定に活かすことで、オンライン診療事業をさらに成長させることができます。
黒字化するための目標設定
損益分岐点件数(今回の例では12件)は、「最低限クリアすべき売上目標」です。この数字をスタッフと共有することで、全員が同じ目標に向かって動くことができます。例えば、「月間12件達成」を目標に、以下の具体的な施策を検討します。
- 集客目標の明確化: 月に12件の新規患者さんを獲得するために、週に何件、1日に何件の予約が必要か。逆算して広告予算やSNS投稿頻度を調整する。
- 業務フローの改善: 1件あたりの診療時間を短縮したり、予約管理を自動化したりすることで、人件費や固定費をさらに削減できないか検討する。
1件あたりの利益を増やす施策
もし損益分岐点件数が多すぎて非現実的だと感じたら、貢献利益を増やすことを考えましょう。
- アップセル:オンライン診療と親和性の高い追加サービスを組み合わせることで、1件あたりの貢献利益を増やし、損益分岐点件数を下げることができます。例えば、30,000円の処方に親和性の高いメニューを加えて35,000円とすることで、貢献利益は16,000円から19,300円に増加し、損益分岐点件数は約12件から約9件にまで下がります。(増加分5000円に対して原価率30%、決済手数料4%を経費に想定)
- 変動費の削減: 医薬品の仕入れ先を見直したり、よりコスト効率の高い配送方法を採用したりすることで、1件あたりの変動費を抑えることができます。こうした改善は積み重なることで大きな利益改善につながります。
固定費削減の検討
損益分岐点件数を下げる最も直接的な方法は、固定費を削減することです。
- 広告費の見直し: CVR(顧客転換率)が低い広告は停止し、成果の高い媒体に予算を集中させることで、広告費の無駄を削減できます。効率的な配分を行うだけで固定費を大きく抑えることができ、同じ予算でもより多くの新患獲得につなげられます。
- 業務の見直し: 煩雑になりがちな業務をオンライン診療と一体化して管理することで、人件費を抑えた運用が可能になります。近年のオンライン診療ツールには、自動配信や決済機能を備えたものもあり、診療だけでなく予約・決済・フォローアップまでを一元管理できます。これにより、クリニック全体の業務効率化を実現し、スタッフの負担を軽減することができます。
なぜオンライン診療システムで収益が変わるのか

ここまでのシミュレーションからわかる通り、オンライン診療の収益は「単価・件数」だけでなく、コスト構造によって大きく左右されます。そして、このコスト構造と継続率に最も大きく影響するのがシステムです。
システム利用料・決済手数料
オンライン診療では、システム費用と決済手数料が基本的に発生します。まず前提として、決済手数料は数%でも利益に大きく影響します。例えば、手数料が3%と5%であれば、売上100万円あたりで2万円の差が生まれます。これが積み上がることで、最終的な利益は大きく変わります。また、オンライン診療システムの料金体系は主に以下の3つに分かれます。
- 月額型:毎月一定の費用が発生するが、診療ごとの手数料は低く、件数が増えるほど利益が出やすい
- 従量課金型:初期費用や月額は抑えられるが、診療ごとに手数料が発生し、件数が増えるほどコストが膨らむ
- ハイブリッド型:月額と従量課金の両方が発生し、バランスは取りやすいが、条件によっては割高になる
重要なのは、どのモデルにもメリットとデメリットがあるという点です。費用が安いシステムは導入しやすい一方で、件数が増えたときにコストが膨らみやすく、結果として利益が残りにくくなるケースもあります。件数が増えるほど、この差はそのまま利益の差として積み上がります。オンライン診療では、初期コストだけではなく件数が増えたときの収益構造でシステムを選ぶことも重要です。
厚生労働省の調査によると、オンライン診療システム導入にかかる初期費用の目安は次の通りです。初期費用:平均値 約78万円 中央値 約27.5万円
出典:厚生労働省 「令和6年度調査結果(速報)概要」(令和7年5月22日)
自動化(人件費・業務効率)
オンライン診療では、予約管理やリマインド送信、決済処理、診療後のフォロー対応など、多くの業務が発生します。単にオンライン診療ができるだけのツールの場合、これらの業務をそれぞれ別のシステムや手動で対応する必要があり、
- 予約は予約システム
- 診療はオンライン診療ツール
- 決済は別サービス
といった形で、運用が分断されやすくなります。その結果、業務が煩雑になり、人件費が増えるだけでなく、対応漏れや属人化が発生しやすくなります。
一方で、カルテ連携やCRM、決済、再診導線まで一体化されたシステムであれば、これらの業務を一元管理することが可能です。
- 診療から決済までをシームレスに処理
- フォローや再診案内を自動化
- 患者情報を一元管理
こうした仕組みが整っていることで、少人数でも運用が回るだけでなく、件数が増えても同じ体制で対応できるようになります。重要なのは、単に業務を効率化することではなく、運用を分断させないことです。システムの設計によって、オンライン診療が拡大できるモデルになるかどうかが大きく変わります。
LINE / CRM・サブスク機能(継続率)
オンライン診療では、診療後にどれだけ自然に再診につながるかが収益に直結します。この継続率は、システムの設計によって大きく変わります。
例えば、予約のたびに専用アプリのダウンロードが必要な場合、そこで離脱が発生しやすくなります。一方で、LINEなど日常的に使っているツールで予約や連絡が完結する仕組みであれば、患者の負担が少なく、継続しやすくなります。また、診療後の関係構築も重要です。単に診療を終えるだけではなく、
- フォローのメッセージが届く
- 次回の案内が自然に送られる
といった接点があることで、再診のハードルは大きく下がります。さらに、サブスク(定期課金)機能がある場合は、継続利用が前提となるため、単発の診療に比べてLTVが大きく伸びやすくなります。都度予約ではなく、継続的に利用される仕組みを作れるかどうかで、収益の安定性は大きく変わります。
重要なのは、機能の多さではなく、患者が自然に継続できる導線が設計されているかどうかです。システムの違いによって、離脱するか、積み上がるかが決まります。
まとめ:オンライン診療の収益モデルと改善ポイント
オンライン診療は、単なる便利なツールではなく、設計次第で収益性が大きく変わる事業です。
本記事で解説したように、収益は単価や件数だけでなく、コスト構造や継続率によって決まります。特に損益分岐点を把握することで、黒字化に必要な件数や改善すべきポイントが明確になります。また、システムの選定によって、コスト・業務効率・継続率は大きく変わります。同じ売上でも利益に差が出るため、収益構造を踏まえた設計が重要です。
まずは、自院の数値でシミュレーションを行い、現状の収益構造を把握してみてください。貴院の状況に合わせた収益シミュレーションも、一緒に整理することが可能です。単価やコスト、患者構成をもとに、最適な設計を具体的にご提案しますので、お気軽にご相談ください
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